通称「第九」の愛称で歌い親しまれ、毎年暮れには日本の何処かで毎日のように演奏され、今や年末の風物詩とまで言われるようになったこの曲は、楽聖ベートーヴェンの《交響曲第九番》の第4楽章の合唱「歓喜の歌」ですが、これほど私たちの生活に溶け込んでいるクラシック音楽は他にないと言えるかもしれません。
作家ロマン・ロランはこの「第九交響曲」について、『ベートーヴェンの生涯の全書である』と書いています。その言葉を証明しているように、この曲にはベートーヴェンの名言「苦悩を突き抜ければ、歓喜に至る」がまさに音楽で表現されています。F.シラーの詩「讃歌・歓喜に寄せて」に深い感銘を受けた若き日のベートーヴェンが30年の歳月を積み重ねてあたため、晩年53歳頃になってようやく完成した作品なのですから…。
この新訂版を制作するにあたり、多くの文献を参考資料とし、ベートーヴェンのこの作品への熱い思いを伝えるべく、親切で信頼される楽譜を目指して編集しました。また、編集にあたり、多くの専門家の方々のご協力を賜りました。この紙面を借りて、感謝の意を表します。
第九を歌う皆様にとりまして、大いに役立ち末永く愛される楽譜になればこの上ない喜びです。
A4判/80ページ